長塚節って、
2019年 06月 24日
私はなんとなく知っていました。明治期から大正期を生きた、「土」を書いた作家。という認識のみですが。
(すみません、これでも専攻は日文…)
藤沢周平にしては江戸時代ではないので、なんとなく今まで敬遠していました。
私は江戸時代好きなんですよ。大学時代の卒論は、それで江戸時代をテーマにしましたからね。ごちゃごちゃして活気があって、文化が花開いたあの時代が好きなんです。
ですが藤沢周平フェアをやっている身としては、避けては通れない道。心してかかりました。厚いし。
これが剣術ものならサックサクいけるんだろうなーと思いながら。
実際読み終わってみて、かなり読むのに神経を使ったと思います。
私普段30分あったら50ページ読めるんですが(特に好きな本はいけます。藤沢周平の江戸時代もの、吉川英治の三国志は行けました)、これはせいぜい40ページくらい。
登場人物多いこともさることながら、手紙、短歌など文語体の文章も多く(しかも一箇所だけ口語体のハガキがあったりして紛らわしい)、しかもいつもの藤沢周平の文章じゃない感じで。
しかもしかも、小説というよりは、大河。一人の男の人生を取材で綿密に追いかけた、大河です。
そこには長塚節という一人の人間が生きていて、周りを彩る様々な人たちも共に走り、青春を燃やし、生きていた姿があります。
最後読み終わった時は、なんか友人を喪ったような喪失感を感じました。一人涙ぐみましたよまじで。
妻子を持たず、短歌の高みを目指し続け、小説も書き、実家の差配もし、また旅を多くし、愛する短歌と旅で命を縮めた長塚節。
悲恋で終わった恋があるからこそ、こんなに辛く感じるのでしょうか。
読み終わって疲れたと感じたけど、しばらくしてもう一度最後の数ページを読み直してしまいました。
解説で清水房雄さんが言われていますが、これは本当に「骨の折れる」小説です。
「一茶」「雲奔る」のような長編の史実を元にした物語ですが、その非じゃない。
本当にこのように感じて考えて生きて、亡くなったのだろうと胸にずっしりくる物語です。
最後「解説」「往復書簡」「往復書簡解説」とありますが、往復書簡解説にある「世田谷文学館の藤沢周平の世界展(2005年)」に私行きました!会期ギリギリだったけど!(すごいなー当時はまだ10代…何年前だよ。時間もギリギリだったせいか空いており、おじいちゃんしかいませんでした)
この本を当時読んでいたら、もっと面白く楽しめたのかな、と思いました。残念。もう一度やってくれないかな。
せめて鶴岡の藤沢周平記念館に行きたいです。(ちなみにこちらは姉とオープン初日に合わせて夜行バスで行った思い出が…笑)